【民法:時効】時間が経てば借金がチャラになるってホント?

法学

消滅時効

世の中には、大小さまざまな人間同士のあらそいがあります。

それを解決するのは、基本的には話し合い一般常識から導き出されるルール(社会通念)ですが、これらで解決できない場合、最終的なよりどころとなるのは法律(正確には「法」)です。

 

法律は原則として万人に平等に、そして無差別に適用されるもので、「そんな法律知らなかったから自分には関係ない」という言い分は聞き入れてもらえません。

言い換えるなら、「法律は全員が熟知している」という前提の下で世の中は動いています。

普通に考えてあり得ない前提ですが、日本は法治国家なのでこの前提を受け入れるしかありません。

なかなかにやっかいですよねぇ。。。(*_*;

 

しかし!!

回避する方法はあります!

 

そうです!!

法律を知ることです!

 

「法律を知らない」ことであなたが困らないように、いっしょに勉強しましょう!

 

本記事は、以前フジテレビ系列で放送されていた「ザ・ジャッジ ~得する法律ファイル~」を模して、紹介する事例(法律問題)に対してある程度明確な判定をしますが、その判定は紹介するケースにのみ適用されるもので、条件、状況によって結論にちがいが出ますので予めご了承ください。
また、実際に法律問題を抱えている方は、迷わず専門家の先生にご相談ください。

 

 

今回は、前回に引き続き民法の時効の記事です。
前回は「取得時効」についてでしたが、今回は「消滅時効」についてです。

 

【民法:時効】長い期間使っていれば他人の物が自分の物に?
「時効」という制度を知っていますか? 「時効」という言葉は犯罪関連の用語だと思っている人が多いと思いますが、ぼくたちの私生活のルールを規定している民法にも「時効」という制度があります。 制度としておもしろい(完全に主観です)ので、知っておいて損はないと思います。

 

消滅時効は、時間の経過によって〇〇ができなくなる、という性質のものなので、刑法の公訴時効と似てるといえば似ていますね。
それでは、基本的な消滅時効の事例から見ていきましょう。

 

 設例① 

・Aは、友人のBから中古のパソコンを1万円で譲ってもらうことになりました。
・AはBからパソコンを受け取りましたが、その際に手持ちの現金がなかったため、後日(1週間以内ぐらい)支払う旨の約束をしました。
・1ヶ月後、AはBに代金を支払うのを忘れていたことに気づきましたが、Bからの催促もありませんでした。
・Aは、「次にBに会った時に渡せばいいか」と思い、その後も代金の支払いをしませんでした。
・それから5年後、AとBが同窓会で再会した際に、AはBからパソコンの代金の請求を受けました。

AはBにパソコンの代金を支払わなければならないのでしょうか?

 

カルマ_顔01
カルマ

消滅時効の原則をまずは知っておきましょう。

 

このケースでは、AはBに代金を・・・
支払わなければならない

支払わなくてよい

 

 

 

カルマ_顔02
カルマ

これは、債権の消滅時効についての問題です。

 

設例①における「パソコンの代金を請求する権利」は、債権に当たります。
債権というのは、特定の人(債権者)が特定の人(債務者)に対して、一定の行為を請求する権利のことです。
設例①においては、「Bさん(債権者)がAさん(債務者)に対して、パソコンの代金を請求する権利」が債権ということになります。
そして、債権は原則として、「権利を行使することができることを知った時」から5年を経過すると時効によって消滅します。
また、「権利を行使することができる時」から10年を経過した場合も時効によって消滅します。

 

Bさんは、パソコンを引き渡した1週間後にはAさんに代金の請求が可能でしたし、さらにそれを知っていたので、設例①のBさんの債権はすでに時効消滅しています。
なので、Bさんには残念ですが、Aさんは代金を支払わなくてもよいという結論になります。

(AさんがBさんとの友人関係を続けたいなら当然支払うべきですが。)

 

ちなみにBさんが、消滅時効が完成する5年が経過する前に、Aさんに代金を請求するなどの処置をしていれば、この5年という期間はリセット(更新)されます。
代金の請求を受けているのに5年間支払わなければ債権が時効消滅するわけではないので、誤解しないようにしてください。

 

 

では次のお題です。

 

 設例② 

・Aは、Bが営むお店で高級ブランド製の中古のバッグを買った。
・Aは、Bからそのバッグが本物であると説明を受けたため、それを信じて購入を決意した。
・代金の支払いは、1ヶ月後に指定の銀行口座に振込む方法となった。
・Aが家に帰ってよく見てみると、そのバッグは明らかに偽物だった。
・Aは1ヶ月後の振込み期日に代金を振り込まなかった。
・Aは、Bから催促があったら偽物だったことを伝えてキャンセル(売買契約の取消)を申し出ようと考えていたが、Bからの催促はなかった。
・バッグの購入から5年が経過した日、AはBからバッグの購入代金の支払いを求められた。
・Aが、「本物だと言われて買ったのに偽物だったのでキャンセルしたい」と伝えると、Bは「取消権の消滅時効は5年であり、すでに購入から5年経過しているので取消権は時効消滅している」と主張してきた。

【補足】
・購入時のバッグの価格は、真正なものであれば適正な価格であった。
・当該バッグは、間違いなく偽物であった。
・Bの主張するように、詐欺を理由して契約を取消す権利(取消権)の消滅時効は、「追認をすることができる時(取消権を行使することができる時)から5年間」である。

AはBに代金を支払わなければならないのでしょうか?

 

カルマ_顔01
カルマ

Bさんが確信犯であれば、ふてぇ野郎ですね。

 

このケースでは、AはBに代金を・・・

 

支払わなければならない

支払わなくてよい

取消権は時効消滅していない

 

 

 

カルマ_顔02
カルマ

これは、「抗弁権の永久性」が絡んだ問題ですね。

 

設例中に書かれているように、取消権(今回においては詐欺を理由として売買契約を取り消す権利です)は、その取消権を行使できる時から5年、または、その行為の時(設例②では売買契約時)から20年で時効消滅します。
Aさんはバッグを買って家に帰った時に騙されたことに気づいているので、Bさんが代金を請求してきた5年後の時点では取消権は時効消滅しているはず、ということになります。

 

では、Bさんの有する「Aさんに代金を請求する権利」についての消滅時効はどうでしょうか。
「Aさんに代金を請求する権利(代金請求権)」は債権なので、設例①で説明した通り、権利を行使することができることを知った時から5年で時効消滅します。
Bさんの代金請求権は、「Aさんがバッグを買った日から1ヶ月後」から行使できる権利なので、Bさんが代金を請求した時点では時効消滅していないことになります。
つまり、表面的な法適用だと、Bさんの請求に対してAさんは取消権を主張できない、ということになります。
でも、このような状況でAさんの取消権の時効消滅を認めてしまうのは、Aさんにあまりにコクですよね。

 

設例中にも記載されていますが、Aさんの心情としては、「Bさんが代金を請求してこなければ自分が損をすることはないし、請求してくるまで放っておけばいいか~」と考えるのが自然ですし、あえてAさん自ら積極的に売買契約の取消を主張するというのは期待できません。
一方、Bさんについて考えると、バッグが偽物だったことを知っていた場合には当然Bさんを保護する必要はありませんし、知らなかった場合においても、しっかりと真贋を調べずに「本物だ」とAさんに伝えているので、間違いなく落ち度があるわけです。

 

そこで登場するのが「抗弁権の永久性」という考え方です。
これは、「実体法上の権利が、他者の請求に対抗して現状維持を主張するための防御的な形態で訴訟上に現れた場合、その権利は期間制限に服しない」という考え方です。
簡単にいうと、設例②のような場合、Aさんの取消権は時効消滅しません、ということです。
取消権(実体法上の権利)が、Bさんからの請求に対抗して、代金の支払い拒否(現状維持)を主張するための防御的なカタチで行使されているからです。

 

「抗弁権の永久性」はあくまでも法理であり、法文上に明文化されていません。
要するに、訴訟において裁判所が持ち出す理屈であって、訴訟外で抗弁権の永久性を相手方に主張しても文字通り相手にしてもらえません。
なので、実際は訴訟において主張することになりますのでご注意ください。

 

バロン_疑問
バロン

ちなみに、AさんはBさんにバッグを返さなくていいの?

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カルマ

取消権を行使した場合には、契約時(バッグの購入時点)にさかのぼってその契約自体がなかったことになります。

なので、AさんはBさんにバッグを返さなければなりません。

バロン_絶望
バロン

えっ?!

まさか10年前の状態で返さなきゃいけないってこと?!

カルマ_顔02
カルマ

今回のケースでAさんは、Bさんから本物であると説明されたことで偽物を本物と誤認して購入を決めています。

なので、消費者契約法の規定により、現存利益のみの返還で足ります。

つまり、経年劣化しているだろう手元にあるバッグをそのまま返せばOKです。

バロン_睡眠
バロン

法律って思ったより血がかよってるんだねぇ。

 

 

最後に少しだけ。
取得時効の記事でも触れましたが、子供のころ友達から借りたまま返し忘れている物ってありますよね?
いわゆる借りパクというやつですが、それを貸してくれた友人は、「その物を自分(友人)に引き渡すよう請求する権利(債権)」を持っていることになります。
ここまで聞くと疑問がわく人もいるかもしれません。
「じゃあ、その「引渡すよう請求する権利」も5年ぐらいで時効消滅するから、時間が経てば借りパクじゃなくなるんじゃない?」と。
賢い人はこういうヘリクツを思いついてしまうかもしれませんが、残念ながらそううまくはいきませんw
まず前提として、所有権は消滅時効が適用されない権利です。
定期的に「持ち主は自分です!」と所有権を主張しなければいつの間にか自分のものじゃなくなってしまうのでは困りますからね。
そして、所有権に基づく返還請求権(物権的請求権)にも消滅時効は適用されないこととされているのです。
なので、借りパクはどこまで行っても借りパクのままということですねぇ。

 

バロン_食欲
バロン

 

それでは、また!

 

「法」には、憲法、法律、条例、政令、規則、条約などいろいろありますが、わかりやすくするために「法律」と表現しています。

 

 

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