MMT
MMTの勉強、第2回目です。
かなりの文章量になってしまいましたが、MMTの根幹理論の説明になりますので、何卒ご容赦ください。
前回の記事で、「政府が全力で財政出動」することで、比喩でも何でもなく、コロナ恐慌で経済的に窮地に陥っている国民全員を救える、とタンカを切りました。
「全力」とはどのくらいかというと、国語辞典で「全力」を引くと説明として書かれている通り、「ありったけの力」、つまり「あるだけの力すべて」ということです。
それこそ、コロナショックとそれに伴う自粛で消し飛んだ、平常のまま経済活動をしていたら生まれていたであろう「消費」すべてを補償するような財政出動です。
コロナショックでGDPの7%が消し飛ぶのであればその7%(およそ38兆円)、20%が消し飛ぶのであればその20%(およそ110兆円)を全部です。
そして、政府がこのレベルで財政出動するためには、MMTを理解して実践する必要があるとも言及しました。
では、MMTはどのような理屈で「巨額であろうが何だろうが財政出動は可能だ」と説くのでしょうか。
ちなみに、「日本には途方もない額の借金があるから巨額の財政出動はできないでしょ」という反論を持った方は、財政破綻論がまやかしであることを説明した第1回目の記事をご参照ください。
話を戻しますが、MMTを理解することで、「現在の日本の状況であれば、政府は巨額の財政出動が可能だ」と判断できるわけですが、どのような理屈からなのでしょうか。
MMTの基本理論その①
自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない
この一文が、MMTの基本理論の1つ目であり、肝の部分です。
「財政的な予算制約に直面することはない」という言葉をはじめて聞いた人のリアクションは、3種類にわかれると思います。
「そんなバカな話があるかよw」か、「えっ!マジで?!何で?」か、「ふーん、そうなんだぁ」のどれかでしょう。
3番目のリアクションをとった人は、余計な偏見や先入観のない知識的に無垢な人でしょう。
1番目のリアクションをとった人は間違いなく常識人だろうと思いますが、MMTが説明する理論(というか事実)を先入観をもって解釈して、「とんでも理論」とか「異端の経済学」と揶揄して切り捨て、そのまま素通りしてしまう可能性があります。
でも、自分が今まで正しく理解していると信じていたことが実は正しくなかった、ということもあるのではないでしょうか。
半信半疑でもいいので、だまされたと思って、2番目、3番目のリアクションをとった人の気持ちでMMTに触れてみてほしいと思います。
基本理論その①の理解
とにかく、まずは「自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない」という言葉の意味を理解していきましょう。
といっても読んだままなのですが、日本円、USAドル、スイスフランなどの自国通貨を有する政府(国家)には、財政上の制限という理由で予算に制約は課されないことを表しています。
日本政府を例に、ちょっと雑に説明します。
日本政府は日本円を発行できます。
日本円は日本国内で広く(というか全国津々浦々)流通していますし、世界的にも安全資産として評価されています。
では、そんな日本円を発行できる日本政府が財源に困った場合どうすればよいか。
日本政府は日本円を必要な額だけ発行すれば解決する、ということです。
至極シンプルで、誰でもわかる理屈です。
実際は日本政府が日本円を発行するわけではなく、というと正確ではないので先に説明しておきますと、紙幣と硬貨は発行する機関が別で、紙幣は日本銀行(以下、日銀)、硬貨は日本政府が発行しています。
なぜ発行する機関が別なのかは置いておいて、日本政府も硬貨であれば日本円を発行できます。
話を戻しますと、日本円(紙幣)は日本政府ではなく日銀が発行します。
なので、日本政府において財源が必要になった場合は、基本的には国債を発行してそれを市中銀行に引き受けてもらいます。
すると市中銀行は、その市中銀行が日銀に持っている日銀当座預金口座から、日本政府が日銀に持っている日銀当座預金口座に、国債の額面の預金を振り替えます。
そして、日本政府が例えば公共事業をしようという場合、政府小切手を公共事業の受注業者に振り出して代金を支払うことになります。
国債を返済できなくなることはない
日本政府は、日本円建ての国債について債務不履行(デフォルト)に陥ることはあり得ません。
この点については、第1回目の記事で説明しておりますのでそちらをご参照ください。
今までの常識から出る疑問
MMTの基本理論をはじめて聞いて、「そんなバカな」もしくは「ウソ?!何で??」という感想を持った人はきっと、上述の内容を読んだ際に「日本円建ての国債はデフォルトしないのは理屈としてはわかるけど、必要な時に必要なだけ通貨を発行しちゃったらインフレになるでしょ?」と考えるのではないでしょうか。
ぼくもそうでした。
インフレになると紙幣が紙くず同然になり、積み上げてきた資産は無価値になり、毎日のように物資の値段が変動(基本的には高くなる)し、デノミネーションを繰り返して・・・
ここまでになるとハイパーインフレという状況ですが、最近でもベネズエラで超ハイパーインフレが発生していますので、想像の中の話というわけではありません。
インフレ(インフレーション)とは物価が上がる経済現象と説明されることもありますが、つまり、物やサービスの価値と比較して貨幣の価値が下がることを指します。
どういった状況で貨幣の価値が下がるのかというと、国内において、物やサービスの供給能力が、物やサービスの需要を下回っているとき(供給<需要)に起こります。
「供給>需要」の状態、つまり物やサービスが余っている状態だと、市場原理として物価は下がり(物やサービスの価格が下がる)、逆に「供給<需要」の状態だと、貨幣の価値が下がります。
もちろん、貨幣の額面が下がる(100円玉が90円玉になる)わけではないので、物やサービスの価格が上がることになります。
この辺りの原理は常識的にみなさんご存知だと思います。
では、「自国通貨建ての国債にデフォルトはあり得ないので、自国通貨を持つ政府は国債を発行することに財政的な制約はない」と説くMMTは、ハイパーインフレのリスクをどのように説明しているのでしょうか。
それが、MMTの基本理論その②です。
MMTの基本理論その②
全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
これが基本理論の2つ目です。
三橋貴明さんは、「政府におカネ的な制約がなかったとしても、供給能力の不足によるインフレ率が限界になる」と言い換えて説明しています。
基本理論その②の理解
「市場にお金が供給され過ぎてダボつくとインフレになる」と何となく理解している人は多いと思います(少なくともぼくはそうでした)が、前述の通り、インフレを起こすのはあくまで「供給<需要」の状態が進んだ場合です。
であるなら、供給能力(物・サービスの生産能力と言い換えてもいいでしょう)を著しく超えない範囲に収まっていれば、政府が財政出動のために国債を発行して、公共事業でも給付金でも何でもいいので、需要を創出したり消費を刺激したりしてもハイパーインフレになることはない、という結論になります。
逆の言い回しで説明すると、政府の財政出動(需要の拡大)には、「健全なインフレ率の範囲」もしくは「供給能力の上限」という限界がある、ということです。
※「健全なインフレ率」とは、2%~4%程度だと考えられています。
基本理論その②では、経済は生産(供給)と需要の関係でおのずと限界が生じることを説明しています。
インフレにならなくても「国の借金」が・・・
「たとえハイパーインフレにならなくても、たくさん国債を発行すればその分国の借金が増えて、将来の世代に負担を強いることになるんじゃないの?」と、これまた常識のある、道徳的な日本人なら誰しも心配してしまうところだと思います。
「将来の世代」に当たる可能性のある10代~30代の若い世代は、「どうせぼくらの負担になるなら、今はガマンするから財政出動なんてしなくていい」と思ってしまうのも無理からぬ話でしょう。
では、財務省あたりが危機感をあおるために使う「国の借金」とは、一体何のでしょうか。
「国の借金」とは、つまり「政府の負債」です。
同じことを表しているはずの2つの言葉ですが、聞いた人に微妙なニュアンスの違いを与えるのは言葉のマジックですね。
「物は言いよう」とはよく言ったものです。
「国の借金」と聞くと、「国民も含めた日本全体が負担している借金」であり、「良くない状態」という印象を受けます。
道義的に、「借金は返さなければいけない」と良識ある大人なら誰しも反射的に考えてしまうからです。
この「国の借金」という言葉こそが、財政破綻論を生み、緊縮財政や増税を国民にガマンさせ、日本人を貧乏にしてきた元凶なのです。
「とは言っても、「政府の負債」という言葉で表したにしても言ってることは同じなら、何も変わらないんじゃない?」と、当然考えると思います。
では今度は、「政府の負債」について考えてみましょう。
MMTの基本理論その③
政府の赤字は、その他の経済主体の黒字
これが基本理論の3つ目です。
「政府の負債は、国民の資産」と意訳してもいいと思います。
基本理論その③の理解
複式簿記をかじったことのある人であればすぐに理解できると思いますが、負債と資産はバランス(均衡)しています。
例えば、ローンを組んで100万円の自動車を買った場合、100万円という負債が発生しますが、100万円の自動車という資産が増えます。
そして、自動車販売店は、100万円の自動車という資産はなくなりますが、100万円の売上が立ちます。
それでは政府の場合を考えてみましょう。
政府が1,000万円で、道路整備という公共事業を行う場合、政府小切手で1,000万円の支出(負債)が出ますが、国内の道路が整備されるという資産を得ます。
公共事業の受注業者側にとっては、労力(人件費)や資材を投じて道路整備という労務を提供する代わりに、1,000万円という報酬を得ます。
つまり、「政府の負債」と「その他の経済主体(主に国民)の資産」はバランスしているわけです。
これはヘリクツでも何でもなく、広く一般的に利用されている複式簿記の原則の話です。
超抽象化して説明すると、政府が全国民に10万円ずつ給付すると、政府に12兆円という負債が発生しますが、市中には12兆円という資産が増えますよ、ということです。
つまり、「政府の負債は、国民の資産」なのです。
改めて「国の借金」の正体
ここまで説明してきた通り、「国の借金」とは「政府の負債」のことです。
そして、「政府の負債」とは「国民の資産」のことです。
つまり、「国の借金」を減らそうとすればするほど、「国民の資産」は同様に減っていき、日本人はより貧乏になってしまうわけです。
そもそも国債は返済できるのか
財政破綻論がまやかしであることは第1回目の記事で説明していますが、日本政府が国債を1,132兆円分発行しているのは事実ですし、道徳心の強い日本人は、「自分たちがどんどん貧乏になるのは感情的にはイヤだけど、これ以上将来の世代にツケは回せないから、緊縮財政も増税も仕方ない」と考えるのが普通でしょう。
前述の通り、道義的に「借金は返さないとダメ」と考えるのが当たり前だからです。
では、日本政府において、国債は返済できるものなのでしょうか。
また、返済すべきものなのでしょうか。
「国債がデフォルトに陥らない」からといって、いつでも好きなタイミングで「国債を減らせる」わけではありません。
常識的に考えて、人が「借金を返す」という行動をとるには、①借金を返せるだけの余剰を作るか、②借金を返すために新たに借金をする(借り換え)という2パターンが考えられます。
なお、①のパターン「余剰を作る」方法には、収入を増やすか支出を減らすかしかありません。
これは国債の場合も考え方は同じです。
つまり、歳入を増やす(基本的には増税)か、歳出を減らす(緊縮財政)か、新たな国債を発行して返済することになります。
増税には限度がありますし、財政破綻論が蔓延して以降、緊縮財政を強制的に推し進めてはいますが、余剰を出して返済するどころか国債を発行しなかった年はありません。
であれば、新規国債を発行して借り換えるしか方法はなくなります。
というか、日本はずっとそうやって国債を償還してきました。
これが「国の借金」が減らないカラクリですし、今の法制度と日本の経済状況で国債の残額を減らす方法は、皆無だとぼくは思います。
そして、「国の借金」が減らないことで実体経済に与える影響も皆無です。
「国の借金」が減らないことで経済的に困っている人を、ぼくは見たことがありません。
心理的に「借金だからなるべく早く返さないと」と心を痛めている人はいるかもしれませんが。
現実的な解決策
現状で国債の償還方法は借り換え以外ありません。
しかし、国債の借り換えは都合が良いのですが、利息が増えるという難点があります。
例えば、償還期限5年の1億円の国債を発行した場合、5年後に償還する時の金額はもちろん1億円ではありません。
利息を付して償還しますので、例えば1億30万円とかになります。
その1億30万円を新たな1億30万円の国債を発行して借り換えるわけなので、ジワジワと利息が増えることになります。
ではどうすればよいか。
まぁ、利息が増えようが借り換えを続けてもいいんでしょうが、日銀が国債を買い上げるというのが現実的でしょう。
改めて言いますが、日銀は日本政府の子会社ですので、日銀が国債を買ってしまえば、実質的に返済をする必要も利息を払う必要もなくなります。
と言っても現実では、日本政府は日銀にも国債の償還はしていると思います。
だとしても、「子会社に利息が払えないから日本は破綻する!」という理屈は、寒いジョークにしか聞こえません。
それでも「借金があるのは心理的に気持ちが悪い」という場合は、国債を日銀がすべて買い上げた上で、日本政府が1,132兆円硬貨を発行して日銀に渡せば(返済すれば)いいでしょう。
日銀の資産が増えたところで、市中の貨幣量(供給と需要のバランス)を変化させるわけではないので、実体経済への影響は皆無です。
硬貨の大きさは1円玉くらいでもいいでしょうが、「1,132兆」という額を刻印することになると思うので、多少の大きさは必要かもしれません。
いずれにしても、日本政府は硬貨の発行はできますが、現行法では1,132兆円玉の発行はできませんので、もちろん法整備が必要になります。
ただ、実現したら記念コインが発行されたり、返済記念式典とかが中継されたりして、かなり盛り上がるでしょうね。
「プライマリーバランス黒字化」という理不尽な目標
日本政府は現在、財務省を中心として「プライマリーバランス黒字化」を目標に動いています。
「プライマリーバランス(以下、PB)」とは「基礎的財政収支」とも呼ばれるもので、財政収支、つまり政府の歳入と歳出のバランスのことです。
PBを黒字化するということは、「歳入>歳出」にするということで、これが実現すれば少しずつでも「国の借金」が減らせるということになります。
なお、「骨太の方針2013」で掲げられたPB黒字化目標は、当初2020年までに達成しようとされていましたが、現在は2025年まで先送りになっています。
ここまで説明してきたMMTの知識をもって、このPB黒字化について考えてみましょう。
まず、PB黒字化目標がなぜ掲げられたかというと、もちろん「国の借金」を減らすためです。
財政健全化というやつですね。
では「国の借金」は、今現在、国民が血ヘドを吐きながら(大げさですが)減らさないとならないものなのでしょうか。
くどいようですが、「国の借金」とは「政府の負債」であり、「国民の資産」となっているものです。
これを減らすということは、血ヘドを吐きながら自分たちの資産を減らす努力をさせられていると言っても過言ではありません。
さらに、「国の借金」は現状では減らせるものではありません。
借り換えが関の山です。
20年以上もデフレが続き、好景気という言葉は日本においては死語に近くなっている現状では、「仮にやるべきだとしても、今じゃなくない?」と思うわけです。
そもそもなぜデフレが続いているのかというと、緊縮財政で公共支出が絞りに絞られて民間に「お金」の流れ(フロー)が起きにくくなり、企業の賃上げは鈍って家計の消費は抑え気味になり、追い打ちをかけるように消費税増税によってさらに消費は減衰。
当然税収も増えないので更なる緊縮財政へと走る。。。
とまぁ、芸術的と表現できそうな負のスパイラルになっていることが原因なわけです。
もしPB黒字化に本気で取り組むのであれば、せめて日銀が目指しているインフレ率2%アップの目標を、数年にわたってコンスタントに達成できる状態になってから改めて考えるべきだと思います。
京都大学大学院教授の藤井聡先生(元経済政策担当内閣官房参与)は、数年前のブログ記事で、下記の主張を日本政府に繰り返し提言しているとおっしゃっています。
「これまでの政府方針は予算の『規律』が厳しすぎ、増税と予算カットが過剰に進められ、結果としてデフレ不況が続き、かえって財政を悪化させている。だから真の『財政再建』を目指すなら一時的に財政規律を緩め、デフレを終わらせる積極財政を短期的に徹底展開することが必要不可欠だ」
この構想が実現しなかったことを大変遺憾に思います。
「PB黒字化」という目標を聞かされた多くの人は、おそらくそれぞれの家計に置き換えて妥当性を考えてしまったのでしょう。
もちろん、ぼくもそうでした。
「収入より支出が多いのはヤバいよなぁ」と漠然とPB黒字化目標を受け入れてしまっていました。
収入を増やして(増税)、支出を減らす(緊縮財政)ことに、抵抗はあるにしても理性的には受け入れてしまっていました。
ここで、MMTの基本理論その③を思い出してみましょう。
政府の赤字は、その他の経済主体の黒字
つまりは、政府の財政黒字目標は、国民の貧困化を目指す目標ということです。
日本国民は、いい加減目を覚ます必要があります。
コロナ恐慌において日本政府がすべきこと
現在、コロナ自粛や世間に漂う不況感によって市中の消費(需要)が減っています。
売る物はある、売るサービスはあるのに、買ってくれる人が少ないという状況です。
このようなタイミングでこそ、需要や消費を作り出すような財政出動、併せて、経済を支える事業者を延命させる財政出動を、全力ですべきではないでしょうか。
多すぎるのも良くないですが、少なすぎるのはもっと良くありません。
企業、個人事業主がもちません。
それこそ、「コロナ禍が落ち着いたから財政出動して経済を立て直そう!」としても、供給者がいない状態だと「供給<需要」の状態になり、悪性のインフレになりかねません。
押さえるポイントは「今でしょ!」だと強く感じます。
あとがき
冒頭にも載せましたが、今回の記事は文章量が多くなってしまいました。
脱線気味の部分もあったかもしれませんが、今一度、MMTの基本である下記3つの理論を、自分なりの言葉でいいので理解してみてください。
とても意義のある知識になると思います。
そして、この3つの理論は「事実」です。
- 自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない
- 全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
- 政府の赤字は、その他の経済主体の黒字
次回は「お金」の正体について説明したいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




コメント
[…] 第2回目へ […]
[…] […]
[…] MMTの記事で言及した通り、自国通貨を持つ我が国日本は、財政的な予算制約はありません。 […]
[…] […]
[…] […]