デフォルト
先日(2020年5月22日)、アルゼンチンがデフォルト(債務不履行)に陥りました。
具体的には、5億300万米ドルの国債利息の支払いがされませんでした。
今回のデフォルトは「テクニカル・デフォルト」と呼ばれるもののようで、「返済は可能だけどあえて返済しなかった」ということみたいです。
つまり、国内のインフレ率、為替レート、金利、外貨準備高、経常収支(貿易収支)などなど、様々な要素を勘案してデフォルトというカードを切る場合もあり、必ずしも「借金を返す」だけが最優先になされるわけではないのがわかります。
とはいえ、現在アルゼンチンは、650億米ドルにおよぶ債務について、債権者と債務再編交渉を行っていますので、逼迫した状態なのは間違いありません。
以前の記事で、日本に蔓延する財政破綻論はまやかしであると書きました。
曲解しないでいただきたい点として、日本であっても現在と異なる状況であれば財政破綻もあり得ない話ではありません。
ただし、現状の日本においては、財政破綻論者が主張するような財政破綻の危険性はない、のは確かです。
なぜプライマリーバランス(基礎的財政収支)が赤字である日本が財政破綻しないのか、デフォルトに陥った国家との違いを確認しながら考えてみます。
なお、政府当局が最終的にどのような思考でデフォルトの決断をしたのかは想像の域を出ませんので、あくまでも個人的な考察であることをご承知おきください。
アルゼンチンの場合
まずはアルゼンチンですが、現在債務再編交渉を行っている債務は米ドル建ての国債です。
当然アルゼンチン政府は米ドルの発行権を持っていませんので、何らかの方法で米ドルを調達して返済しないといけません。
アルゼンチンは自国通貨のペソがあるので、ペソを発行して米ドルに替えることもできますが、これをするとペソが通貨安になります。
ペソで米ドルを買うことになりますので、米ドルに対してペソの価値が下がるためです。
そして、急激に通貨安が進むと輸入品の価格が上がりますので、国内がインフレになる可能性があります。
輸入量が変わらなかった場合は輸入品の価格増がそのままインフレ圧力になりますし、輸入が減った場合でも、国内の商品量が減ることがインフレ圧力になります。
アルゼンチンは、ただでさえGDPがマイナス成長なのにインフレ率が年150%を超える状態であるため、これ以上インフレが進むのは危険だと考えられます。
ギリシャの場合
正確にはギリシャはデフォルトを起こしたわけではありませんが、2009年ごろから財政危機に陥り、EUやIMFに支援してもらいながら今でも財政再建を進めています。
ギリシャの通貨はEUの共通通貨ユーロであり、自国通貨を持っていません。
ユーロの通貨発行権はECB(欧州中央銀行)が持っているので、各国に金融政策の選択肢の幅はありませんし、為替調整も行えません。
また、EUでは財政政策は各国にまかされていますが、おのずと自由度は狭まります。
さらにギリシャは、経済統計の不正確さ(あるいは粉飾)、政府支出の不健全さ(公務員が多い、社会保障が手厚い)も相まって、財政危機に陥りやすい土壌があったのかもしれません。
ロシアの場合
1998年にデフォルトに陥っていますが、このデフォルトとなった国債は自国通貨であるルーブル建てです。
自国通貨建ての国債の場合、自国通貨を発行して返済すればよいのでデフォルトは本来起こりえないわけですが、当時のロシア政府はデフォルトを選択しました。
これは、当時のロシア政府が固定為替相場制を堅持していたためです。
当時、アジア通貨危機のあおりを受けてロシアでも金融危機が起こりはじめており、さらに石油価格が下落していました。
輸出の大半を天然資源(特に石油)に依存していたロシアにとってこれはかなり痛いもので、経常収支(貿易収支)が悪化しました。
輸出額が減って相対的な輸入額が増えたこと、また、金融危機の影響でルーブルや国内市場の信用も下がっていたことでルーブル安の圧力が高まります。
固定相場を維持するためにロシア政府はルーブルの買い支えをしますが、じきに買い支える外貨準備も底をつくことになります。
ルーブルを刷って外貨(米ドル)に替えるにしても、それによってルーブル安に為替レートが動いてしまうので、「(外貨を獲得して)ルーブル高にしようとしてルーブル安を招く」というオソマツな感じになります。
また、貿易黒字にして外貨を獲得しようにも石油価格が下落していてむずかしいという状態です。
思い切って固定相場を諦めようにも、諦めた瞬間にルーブルが暴落して、それまで慢性的に続いていた悪性のインフレがさらに加速するおそれもあります。
というわけで、ロシア政府の選択肢は1択(選択肢ではないですね)で、外貨建てで国債を発行するしかなくなってしまいました。
そんな中、国債の償還・利払いを新規国債発行でしのごうとしますが、ここでも固定相場のジレンマがあります。
ルーブル建ての国債ではあるのでデフォルトは本来しませんが、ルーブルで返済したところで、信用を失ったルーブルはすぐに米ドルへの交換を求められます。
米ドルに交換されることすなわちルーブル安になるということなので、返済をすること自体にリスクがある状態になってしまってました。
ロシア中央銀行が国債をすべて買い上げるという選択にも同じリスクがありますので、もうこれは、構造的に外貨建ての国債と同じなわけです。
最終的に、ロシア政府はデフォルトを選択することになりました。
その後、ルーブルの固定相場を切り下げたり、外貨を借りようとしたものの市場もIMFも貸してくれなかったりで、そのままロシアは変動為替相場制に移行したそうです。
その結果、予想通りルーブルは暴落してインフレ率は184%に挙がっています。
日本の場合
アルゼンチンについては、国債がドル建てである点、インフレ率が高い点がネックでした。
ギリシャについては、通貨の発行権を持っていない点がネックでした。
ロシアについては、インフレ回避のための為替レートの維持(ルーブル安の回避)がネックでした。
現在の日本に同様のボトルネックはあるのでしょうか。
国債は日本円建て
20年続くデフレ病
日本円の発行権を有している
固定相場を採用していない(さらに、円の信用もある)
以上です。
あとがき
コロナ対策の第2次補正予算が国会で審議されています。
約32兆円規模と、まだまだ足りないながらも着実に前に進んでいます。
今回の補正予算の財源も国債です。
財務省が「ワニの口」と表現している以下のグラフですが、今回で上唇が完全に上に反り返ることになりそうです。(赤線で表現)

財政破綻論を吹聴する財務省ですが、これで破綻しなければQ.E.D.ですね。



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